"上出(うえで)"様。
ちょっと前の話なんですけど、某回転ずし屋さんに行きまして。普段からも行ってるんですけど、その日の会計は全て会社持ち。いわば社長の奢りだったわけです。
でも社長は一緒には言ってなくて、奥さんと一緒に行っておいで、と社長が言ってくれて、相方さんと2人で出向いたわけなんですね。
美味しい寿司を満腹食べ、さあ帰ろうかとなって。
気分は最高なわけですよ、領収書を切ってもらえるってんで。
で、レジに行き、会計を済まし、言いました。
「領収書もらえますか」と。
レジの若いお兄さんは「了解しました」と。
そしてペンを持って準備万端になったところで「宛名はどうされますか?」と聞かれ、ボクらは「上で」って言ったんです。
するとお兄さんは、
「うえ、ですね……上は上下の上で良いですか?」と聞くんです。
一瞬こちらも「ん?」と思ったんですけど、うんいいよ、と。
「上」と書いたところで貰おうかと手を伸ばそうと思ったら、お兄さんが謎の質問をするわけです。
「"で"はどういう漢字ですか?」と。
こちらは当然「えっ」となるわけです。
それでもお兄さんは続けて「出るの"出"ですか?」と聞いてくるんです。
その質問の意味が分からなくて、レジのお兄さんとボクら3人で暫しの沈黙が流れます。ボクらも頭の中で並べてみるわけです。
上下の"上"と出るの"出"を。上…出…、上出……?
ああ! 上出(うえで)様、ね!と。
その意味に気づくと、笑ってしまっては申し訳ないと思いつつも、ニヤニヤが止まらない訳ですよ。で、ニヤニヤしながら「いや"上"だけでいいんだよ」と伝えると、今度はお兄さんが「えっ……えっ?」と、どぎまぎ。
そうなんです。レジのお兄さん、領収書の書き方が分からなかったんですよね。
上だけでいいっていうのも、もしかしたら「"上"だけの苗字の人が居るのか!?」とでも思ったのかもしれませんね。
「うん、もうそれでいいんだよ。ありがとう」と言ってこちらが手を伸ばすと、あたふたしていたお兄さんは、そこで初めて「上様」で良いんだということを理解したようで、恥ずかしそうに笑いながら領収書を渡してくれました。
相方さんと店を出てから、時代だな~とひとしきり笑いまして。
そうですよね。今の時代、しかもチェーン店で領収書切る事なんて、滅多に無いだろうなあと。
これは決して、店がちゃんと教育してないとか、そういうことを言ってるわけではなくてですね。教育してなくて当たり前。だって今時、経費で回転寿司行くってそうそう無いと思うんですね。喫茶店とかならまだありそうですが、今の時代に経費で落とすこと自体、もう無いんじゃないだろうか。
だから、レジの人に領収書の書き方を知らない人が居てもおかしくはないよなあ、と。
意外なところで、自分も年くったなあと感じた、そんなお話でした。
ではちょっと短いですが、今日はここまで。
おわり。