昔話と夢の話を少々。
気づけば最後に更新した日から半月も経ってたんですね。できるだけ間が空かないようにと思っていてもなかなか難しいものです。
今日またまた夢を見ました。
今回の夢は、実は今までも何度か見ていて、場所や自分の年齢・年月などは違えど、毎回同じ人に自分が追いかけられる夢です。追いかけられるとか怖すぎ!と思うでしょうが、実際のところ、その人に追いかけられること自体、ボクの実話であります。
しかも怖くはない。むしろ楽しんでますよ。少なくとも夢の中のボクは。
追いかけてくる人というのはボクが通っていた小学校の6年のときの担任のI先生です。つまるところ、ただの追いかけっこですね。懐かしい。
懐かしいので、今日はちょっと昔話をしたいと思います。
今日はっていうか、いつものことですね。ハハッ。
こんなこと、あまり大きな声では言えませんが……当時のボクは通っていた小学校では問題児でした。このブログでも何度か書いていますが、その頃ボクの両親は仲がすこぶる悪く、いわゆる「機能不全家族」というもので、今はそこそこ仲良いほうですが一度離婚するかしないかまで発展するほど、家庭内が冷めきっていました。
兄との愛情格差もありましたし、両親共に揃っているのにも関わらず、父親の仕事が多忙すぎて実質母子家庭のような状態でした。
その上、昔からボク自身の体が弱いこともあり、よく学校を休んでは隣町の大きな病院に点滴を打ちに通院してましたし、両親の不和、愛情飢餓に加え、仲良くしていた友達のグループからいじめにあってしまったのが運のつき。早いうちからグレてしまったんですね。
最終的には小学生では絶対に出してはいけないものにまで手を出してしまい、当時は自分の居場所はどこにも無いのだと思って孤独でした。
そんなときにお世話になったのが担任のI先生でした。
ボクが通っていた当初は、相談室的なものが学校に存在しなかったので、色んな教室を間借りして別室登校なるものをしていました。図工室の隣の準備室とか。パソコンルームの準備室とか。
もちろん、相談室が無いということは相談室の先生というのも居なかったので、同学年全クラスの担任の先生を全員巻き込んで、全員に勉強や勉強以外の何やらを教えてもらってました。今考えても、すごいと思います。かなりトクベツ扱いされてました。
その頃は自分で言うのもなんですが、本当に複雑な時期で。たぶん情緒不安定だったんだと思います。親が恐くて、でも学校も行きたくなくて、でもサボると親が尾行しててすぐバレるので渋々行って。
行けば、I先生が顔を見に来て「よし、今日も来てるな」と確認。テストの丸付けやその他色々、I先生が仕事をしながら片手間でボクの勉強を見てくれる、そんな毎日でした。
そこまでしてくれていたのに、ボクは大バカだったので、この時間はどの先生も来れない、自習だ、と分かった瞬間、部屋を飛び出して校内の散歩に繰り出すのです(本当にバカ)。
1年生~6年生までの教室を廊下から眺めながらブラブラ。たまに他の先生に注意されて走って逃げて、用務員のおじさんに挨拶。「まぁたサボっとんか」なんて言われてエヘヘ、と笑って逃げて。
鳥小屋の中の鶏やうさぎを眺めて、また他の先生に見つかって怒られて逃げて。職員室をそっと覗いてI先生がいることを確認し、並々注がれた塩素臭いプールを眺めてたらいつの間にかそこに居たI先生に見つかって。
先生、ボクを見つけたらいつも呆れた顔で笑うんですよ。こっちもヤベー!って顔して。もうそこからは鬼ごっこですよ。こっちはクソガキだから体力もあるし、校内も熟知してますから階段も1段飛ばしてタッタカいくわけです。ふと気になって後ろを振り向けば、I先生がハァハァ息を切らせて追いかけてきてるわけですよ。
「待たんかコラァ!」って言うんだけど、体が重くてついていかないのか差は広がるばかり。でもこっちは遊び半分なので、先生が来るまで待つわけです。姿が見えれば逃げ、離れすぎたら来るまで待つ。そんな1年だったんです。
ほんと、I先生には心配も苦労も迷惑も数え切れないほどたくさんかけたと思います。今でも申し訳なく思う……いや、大人になった今だからこそ申し訳ないという気持ちがあるのかな。当時はあんまりそうは思わなかったです。
何というか、もうタガが外れてしまって。今まで押さえ込んでいた感情や気持ち、親からの抑圧から解放されている、学校の時間。何をやっても許される、自由な時間。とても心地よかったんです。
そして何と言っても、こちらが何をしてもまた次の日には笑って相手してくれる先生や大人がいること。これが一番、嬉しかったのだと思います。
ボクには大好きな先生がいまして、担任ではないのですけど、同学年の他のクラスの担任の先生でH先生と言います。当時は50代くらいだったと思います。女性の先生でした。
その先生は本当に優しくて、いつも笑って「ゆまるちゃん、今日も元気そうね」って言ってくれるんです。ボクが散歩してる途中で見つけても、絶対に注意したりしないで、むしろ「今日はいい天気だから外も暑いでしょう」とか「職員室で休憩していく?」なんて言って、すごいフレンドリーな先生だったんですね。
自分のクラスのこともあるのに、いつもこっちを気にかけてくれて、よく別室にもI先生と一緒に顔を見に来てくれたりして。後から知ったんですが、I先生がよくボクの相談をH先生にしたりしてたみたいです。
だから特別、気にかけてくれてたんでしょうかね。ちなみにボクはこの2人、本当はデキてるってずっと思ってました。どちらも既婚者だったのに。
で、あるとき、家のことで色々ストレスが溜まってムシャクシャしてて、その上学校で、詳しくは覚えてないんですが、I先生に怒られたんですね。「いい加減にしろ」と。それでついカッとなって、使ってた長机をヒジでドンッ!と小突いたら、机に穴が開いてしまったんですよ。それで更に怒られて、I先生が部屋から出ていってしまったんですね。
そこからちょっとI先生とボクの心の距離みたいなものが若干離れた(ように感じた)ことがあったんです。そんなときにH先生と職員室前でバッタリ会って、ボクの顔が元気なさそうに見えたんでしょうかね。いつも以上に気にかけてくれて。
そのときの会話は今もハッキリと覚えてるんですが、ボクそのとき初めて学校で泣きじゃくったんですよね。
H先生がいつも言っていたのが「I先生はあなたのことが大好きよ。あなたのことをいつも心配してるし、あなたのことがすごく大事なの。どうすれば教室に戻れるようになるかなあって毎日考えてるのよ」という言葉。それまでは「なにそれキモいwww」とか「いらないよそんなのwwww」とか笑って返してたんですが、そのときばかりは笑えなくて。
「担任がI先生じゃなくて、H先生のが良かった」と、ポツリと呟いたんですね。そしたらH先生が「まあ嬉しい!でもI先生も一生懸命がんばってるんだからI先生の前でそれは言っちゃダメよ?」と。
でもボクはクソガキですから「だってH先生のほうが好きなんだもん」と一言。するとH先生は「まあ、本当?嬉しいわあ!私もあなたのことが好きよっ。もちろん、I先生もね?」と大して要らない情報をイチイチぶっこんでくるわけです。
そこでボクも負けじと「いらないよI先生のは」と言い返します。「えー、どうして?」と聞かれ「こっちが好きになれないから。ボクのことは放っといてくれていいのに」と。でも「そういうわけにもいかないでしょう」とH先生も食い下がってくる。
まあ、担任だしな……と可愛くない返事をするボク。しかしH先生はこう言う。
「それもあるかもしれないけど、何より
I先生はあなたのことを愛しているからよ?」
愛している……だと……?
もうね、衝撃の事実ですよ。
小学生にとって"愛している"という言葉って「大好き」よりも更に上の言葉っていうポジション+"大人が使う言葉"なんですよね。子供にとっては敷居が高く、そして少なくともボクには「聞きなれない言葉」でした。
正直、こっぱずかしかったんです、ええ。
照れ隠しも入って「うええええ、きもいよ、やめてよー!」と職員室前廊下で叫ぶわけです。そりゃそうですよね。小学生は大人の言葉を本気にしますから。
でもH先生は真剣です。
「本当のことよ?あなたのことを大切に思ってるから放っとけないのよ」
ですがクソガキのボク。言い返します。
「んなわけないじゃん。
それに、教師がそれじゃアカンやろ。クラスにも自分の生徒がおるのに」
でもH先生も負けない。
「もちろんクラスの子たちも大事に思ってると思う。
でもあなたのことだって大事なの」
なかなか引き下がらないH先生に少々苛立ちが出てきたボク。今までのことや、親のこと、家であったことなどを思い出して、色々こう……溢れ出てきちゃったんですよね。
強く「んなわけないっつってんじゃん!」と怒鳴ったんです。そしたらH先生は神妙な顔になって「…どうしてそう思うの?」と。ボクはボロボロ涙を流しながら言いました。
「うちの親でもそこまでしないのに、何で赤の他人のI先生がそこまですんの!?
おかしいやろ!!」
そう言ったボクにつられて、H先生も泣いちゃって。
ボクを抱きしめて一緒に泣いてくれました。
ちなみにボクはH先生を何度か泣かせてしまってます。女性を泣かせるなんて、ボクは本当に大バカ者ですね。
大人になった今だから、分かることなんですが、実はボクI先生も好きだったんですよね、本当は。H先生とI先生が並んでボクの前で話してくれてるのを見ると、母親と父親みたいで。実際、本当の両親がこの2人なら良かったのに、と何度も思ったことがあります。
好きだったんだけど、自分の本当の親と比べてしまって、虚しくて情けなくて、そして、先生は先生だから絶対に自分の親にはなってくれない、ならない、という現実がまた悲しくて。
そして何より、本当の親が愛せない子供を、赤の他人の先生が愛せるわけがない、と。
もし、H先生の言っていたことが本当のことだったとしても、それは認めたくなかったわけです。
もし認めてしまったら、じゃあボクの親は何なんだ、何でボクを愛してくれないんだ、何でお兄ちゃんしか愛さないんだ、お母さんなんか嫌いだ、となるから。
子供は、親を嫌いにはなれません。どんなことがあってもどんなに酷いことをされても嫌いにはなれないんです。嫌いになると、自分が生きていけなくなるからです。だから、認めてはダメなことだったんです。
認める=自分の死、を意味するので。
でも、I先生とH先生には本当に心から感謝してます。
特にI先生には、感謝してもしきれない。I先生のお陰であの生き地獄のような1年を楽しく過ごせたので。本当は直に会ってお礼を言いたいんですが……地元に帰ったときに運良く偶然会う確率なんてそうそう無いですし、0%に近いですね。
ボクのクラスの子が同窓会を開くとは思えないですし、ボク自身が呼ばれる可能性は先生に偶然会う確率より低いでしょうしね。
ただ、I先生との追いかけっこの夢は本当によく見るので、よっぽど楽しかったんだろうなあとしみじみ。子供の頃の自分と先生が学校で追いかけっこというパターンが多いですが、今日見たのは、今の自分でI先生も(ボクの想像で)老けていて、先生と偶然出会って、ボクが先生の顔見た瞬間ソッコー逃げるって言う……。
何か、ボクって今も相変わらずクソガキですね、特に思考が。
長くなりましたが、ボクの大事な思い出のひとつです。黒歴史とも言いますが。
でも、これからもずっと大切にしたいです。
それでは今日はこの辺で。
おわり